焼肉の醍醐味は、さまざまな部位の個性豊かな味わいを堪能することにあります。しかし、ただ闇雲に食べ進めてしまうと、せっかくの繊細な風味を感じ損なってしまうことも。そこで今回は、肉のプロが推奨する「黄金の順番」と、その理由についてお話しします。

焼肉を究極に楽しむための「黄金の順番」
結論から申し上げると、焼肉の理想的な順番は「脂が少なく、さっぱりとした部位から始め、徐々に脂の多い濃厚な部位へ移行する」ことです。この順番には、味覚を最大限に活かし、最後まで飽きずに楽しむための科学的な理由があります。
1. 最初にさっぱりとした部位を
まず最初に召し上がっていただきたいのは、牛タンやハツ、ミノといった、脂が少なく歯ごたえの良い部位です。
- 牛タン:焼肉の王道である牛タンは、そのサクッとした独特の食感と、噛むほどに広がる上品な旨味が魅力です。レモン汁でいただくことで、口の中がリフレッシュされ、次の肉を美味しく迎える準備が整います。
- ハツ(心臓):心臓の部位であるハツは、ほとんど脂肪がなく、コリコリとした食感が楽しめます。新鮮なハツは臭みがなく、まるで刺身のようにさっぱりといただけます。
- ミノ(第一胃):ミノもまた、コリコリとした食感が特徴的なホルモンです。脂が少なく、淡白な味わいなので、焼肉のスタートに最適です。
これらの部位を最初に食べることで、舌に脂の膜が張るのを防ぎ、肉本来の繊細な風味をしっかりと堪能することができます。また、胃への負担も軽いため、食欲を刺激しながら、本番に向けてのウォーミングアップにもなります。
2. 次に赤身肉の旨味を堪能する
さっぱりとした部位で舌が整ったら、次に赤身肉に移りましょう。モモ肉ヒレなどの部位が該当します。
- モモ肉:柔らかいものからしっかりと歯ごたえがある部位まで、様々ありますが、中でも「ランイチ」と呼ばれる ランプ、イチボは柔らかくて濃厚な味わいが特徴です。
- ミスジ:肩甲骨まわりの希少部位であるミスジも、ぜひこの段階で。ミスジは美しい霜降りと、とろけるような食感が特徴です。
この段階で、味覚のピークを迎えます。肉そのものの力強い旨味を堪能し、満足感を高めていくのがポイントです。
3. 最後に濃厚な霜降りとホルモンで締めくくる
クライマックスは、ロースやハラミ、カルビやホルモンといった、脂の甘みとコクが際立つ部位です。
- ロース:牛肉の背中の部位で、適度な霜降りと肉の旨味のバランスが絶妙です。タレとの相性も抜群で、焼肉の醍醐味を存分に味わうことができます。
- ハラミ:横隔膜の部位で、見た目は赤身肉のようですが、内臓肉に分類されます。脂身が少なくヘルシーでありながら、しっかりとした肉感と濃厚な旨味が楽しめます。「結」でも人気の「壺漬けハラミ」のように、タレと絡めて食べるのもおすすめです。
- カルビ:焼肉の代名詞ともいえるカルビは、バラ肉の部位。きめ細かな霜降りと、口の中でとろけるような脂の甘みが特徴です。タレの味がしっかり絡むため、ご飯との相性も抜群です。
- ホルモン:シマチョウやテッチャン(大腸)などのホルモンは、脂の旨味が濃厚で、独特の食感が楽しめます。脂が多いため、網が焦げ付きやすいので、最後に焼くのが良いでしょう。
この順番で食べ進めることで、味の濃さや脂の量に舌が慣れてしまい、他の部位の良さが分からなくなることを防げます。焼肉を最後まで飽きずに、多様な味と食感のコントラストを楽しむことができるのです。

よくある質問:Q&A
Q. 焼肉の前にキムチやナムルを食べた方がいいって本当?
A. はい、本当です。キムチやナムルは、食物繊維が豊富で、消化を助ける働きがあります。また、辛味成分のカプサイシンが食欲を増進させる効果も期待できます。焼肉を食べる前に、これらのサイドメニューで胃の準備を整えるのは、プロも実践する食べ方の一つです。
結び:焼肉をより深く、美味しく
焼肉の美味しい食べ方に「絶対的な正解」はありません。しかし、この「黄金の順番」を意識することで、肉本来の持つ繊細な風味を余すことなく味わい、食後の満足感をより高めることができるでしょう。
私たち「結」では、お客様が肉の持つ魅力を最大限に感じられるよう、部位ごとのカットやご提供の仕方にこだわりを持っています。ぜひ、このコラムを参考に、あなただけの「焼肉の旅」を心ゆくまでお楽しみください。